発酵食品のはじまり -発酵の基本知識-④

発酵食品のはじまり

発酵食品が微生物の代謝物による作用だと確立されたのはほんの100年程前ですが、それよりもはるか昔、顕微鏡なども当然なく、微生物の関与さえ認識されていない古代ローマ以前よりも食されていたといわれています。

その文化は世界各地で発展し、さまざまな食材と深く関わってきました。

日本であれば、米麹が発明される以前よりどぶろくのような酒が神事により神に捧げられ、ヨーロッパではヤギや羊の乳からチーズ、ブドウからワイン、麦からパンやビールなどが作られていました。

諸説はあるものの、その多くの痕跡は遺跡や書物などから発見されています。

発酵食品のはじまりは酒

科学的に解明されるずっと以前から人類は発酵食品を作りだしてきました。

そのはじまりは放置していた食材が腐敗することなく香気を発し、味や風味がよくなることを経験的に学び、受け継いで伝えてきたと考えられています。

果物が自然発酵して出来た「猿酒」がその起源だという説があり、果物が自然発酵することで酒になることを発見した古代人がその経験を学び伝えたといわれています。

古代エジプト文明で有名な「死者の書」にはビールやパンについての記述があり、さらに、約7000~8000年程前のメソポタミア文明の遺跡からはワイン製造の形跡が出土されています。

その後、キリスト教圏とローマ帝国の拡大によりヨーロッパ全土へと伝え広がり、現在まで伝わったとされています。

発酵食品の原型となるものは、このように世界各地で発展を遂げ、定着してきましたが、微生物によるものだということが確立されるのはもっともっとずっと後のことであり、その間には膨大な経験と時間が要されることになりますが、その結果得られた再現性は大変優れており、現代もほぼ変わらない製法で伝えられてえいるものも数多く存在します。

日本での発酵食品のはじまりもやはり酒

日本には縄文時代の中期に山ブドウや野イチゴなどの果実を酒にしていたと思われる土器が長野県の遺跡から出土しています。

口噛み酒の製法は、現在一般的に行われている日本酒、清酒の製法とは大きく異なり、米などの穀物や木の実などを口に入れて噛み、甕などに吐き出して溜めておいたものを発酵させる製法で、甕に吐き出した物の唾液に含まれるデンプン分解酵素「アミラーゼ」の作用により、デンプンが糖に分解され、空気中の野生酵母が混入、発酵したものが酒になったといわれています。

具体的な発祥地は不明ですが、東南アジアや南太平洋地域が発祥の有力地とされているようです。台湾や沖縄でも盛んに作られ、口噛み酒は神事に使われる場合には、巫女などの女性が選ばれ、神酒(みき)と呼ばれていました。

”醸す”の語源は口噛み酒

諸説ありますが、「かもす~醸す」の語源は口噛み酒の「噛む(かむ)」が語源という説があります。

奈良時代に定着し、江戸時代に確立する発酵食品

その後、奈良から平安時代には米麹が発明され、江戸時代には現代のわたしたちが慣れ親しんでいる発酵調味料の殆どが庶民へ伝わり、作り方も確立されていきます。

その後、1861年にフランスの科学者「ルイ・パスツール」の著書「自然発生説」の検討により、発酵が空気中の微生物による関与が原因ということが証明されることになります。

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