主な発酵の種類 -発酵の基本知識-③

主な発酵の種類

「発酵」にはいくつかの種類があります。

普段わたしたちが口にするなじみのある発酵食品は、それぞれはたらきの違う発酵により生まれ作りだされます。

発酵とは微生物のはたらきにより、食物などを微生物が分解し、その代謝物が人にとって有益な作用をもたらすことを指しますが、発酵にはその微生物が分解するための食物のほかに、決められた条件が必要となります。

それらの条件がそろうことにより、行われる発酵が異なります。

それは、食物の原料であったり、介在する微生物の種類であったり、温度や湿度、酸素の有無などの生育条件などで、それらの違いにより出来上がる発酵食品が異なってきます。

たとえば、わたしたちになじみのある味噌は、米麹と茹で大豆をつぶしたものと塩を混ぜ、半年以上発酵させたものを指しますが、醤油は大豆と麦に麹菌を繁殖させた醤油麹と食塩水を半年以上寝かすことで完成します。

その過程で行われる発酵の種類は、いずれも「乳酸発酵」「酵母発酵」と同等ですが、似た材料を発酵させてもその作用は異なり、違う発酵食品となります。

主な発酵の種類と作られる発酵食品

  1. 乳酸発酵・・・乳酸菌による発酵
    発酵のスターター的役割。
    乳酸菌が、食材の糖類をエサに乳酸を生成する。
    この乳酸により、pH値が変化し、雑菌が繁殖しにくくなる。
    ヨーグルト、チーズ、キムチ、漬物、味噌、醤油

  2. 酵母発酵(アルコール発酵)・・・酵母菌による発酵
    酵母菌が、食材の糖類をエサに、アルコールと炭酸ガスを生成する。
    パン、ワイン、ビール、清酒、味噌、醤油

  3. 酢酸発酵・・・酢酸菌による発酵
    酢酸菌が、食材の糖類とアルコールをエサに酢酸を生成する。
    酢、漬物

発酵食品における三大発酵

これらの3つの発酵は、三大発酵と呼ばれ、いずれも発酵過程には決められた順番とメカニズムで成り立っています。

多くの発酵食品を作りだすにあたり、ほぼ1から3の発酵の順に行われ、逆向きの発酵というのは行われることはありません。

これらは微生物の拮抗作用の推移で、発酵に関与する微生物の多くは主に糖類をエサとしており、そのエサとする糖類(食物原料)の種類によっても繁殖する微生物は異なります。

従って、同じアルコール発酵によって作りだされる酒でも、微生物のエサとなる糖類=原料が穀物か果物なのかで作りだされる酒は異なります。

ビールは麦などが主な原料ですが、ワインは果実が原料となります。このことからと考えると違いがイメージしやすくなるのではないでしょうか。

その他、微生物以外による発酵

発酵とは、微生物による働きということは既述の通りですが、発酵はそれ以外にも微生物の生成する酵素による分解や自己消化もそれに含み発酵と呼んでいます。

麹菌による糖化

主に麹菌により生成された酵素、アミラーゼ酵素により、食品のでんぷんがブドウ糖に分解される行程を糖化作用と呼びます。

この行程で生み出されたブドウ糖は日本における多くの発酵食品を作りだすにあたって重要な役割を持ち、発酵がはじまるスターター的役割をもつ乳酸菌のエサとなります。

自己消化による酵素発酵

主にイカなどの魚介類を中心に、死後自己の保有する酵素により分解されていくことを指します。

タンパク質分解酵素であるプロテアーゼがその代表的なものですが、多くのものは自己消化によりうまみ成分を作りだし、熟成ともよばれます。

イカの塩辛などはこれにあたりますが、中には微生物の作用によって発酵するものも存在します。

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